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【風】産経新聞 「脳死」を再び考える

2009/05/31 08:49

 

 

 

 

5月中旬から産経新聞紙上及びネット上の産経ニュースに、【風】-「脳死」を再び考える-と題して、日本の脳死問題についての諸問題や世界の移植医療との比較、そして賛否両論等のいろいろな意見を掲載しています。

 

臓器移植に対して切り込んだ分かりやすいよい記事だと思いますので、まとめて紹介させていただきます。

ぜひご参考にしていただきたいと思います。

 

 

 

 

【風・「脳死」を再び考える】

 

分かれる意見 着地点は

2009.5.14 13:38

http://sankei.jp.msn.com/life/trend/090514/trd0905141340008-n1.htm 

 

 

 今国会で、臓器移植法の改正に向けた動きが本格化しつつある。法施行から12年を経て初の本格審議だが、具体的な改正の中身をめぐって議論が噴出し、現状で提出されている3法案だけでも、合意形成に手探り状態が続いている。これまでに行われた脳死移植は81例で平均年7例程度と決して多くない。この現状をどうすべきなのか。自分や家族が脳死移植を必要とするかもしれないし、臓器提供について判断を迫られる機会に遭遇する可能性もある。決して他人ごとでない問題について、この機会に考えてみたい。

 

 焦点の1つは、子供の脳死移植だ。平成9年に成立した臓器移植法では、本人の書面による意思表示が臓器提供の条件で、民法上意思表示が有効でないとされる15歳未満の子供の臓器提供は認められていない。ところが、特に心臓に難病を抱え移植が必要な子供の場合、体のサイズにあった臓器でなければならず、事実上、国内で移植の道はない。そんな子供たちはこれまで海外での移植を求めた。

 

 だが、海外でも臓器不足は深刻で、昨年5月、国際移植学会が「自国民の移植ニーズに足る臓器を自国または周辺諸国の協力を得て確保するよう努力すべきだ」というイスタンブール宣言をまとめた。世界保健機関(WHO)も同様の新指針を採択する方針で、今後、渡航移植は受け入れ先がなくなる可能性が高い。つまり、今後は、この国に生まれたがゆえに助けられない子供たちが出る可能性もあるということだ。

 

こうした現状を脳死心臓移植の第1例にかかわった大阪大病院移植医療部の福嶌教偉医師は「外国の子供から臓器提供を受けるケースを認めながら、日本人の子供は、同じ状況でありながら、臓器提供を一律に認めないというのは矛盾している」と話す。この一方で、子供の臓器提供には専門家のなかからも異論が出ている。小児科医で大阪医科大の田中英高医師は「小児の脳神経細胞は抵抗力があり代償機能が強くまだ未知な部分が多い。小児の脳死診断には限界がある」と根本的な部分に疑問を呈しており、小児の臓器移植についてだけでも専門家のなかでも議論が分かれている。

 

 子供の移植のほかにも、現行法では生前に臓器提供の意志を示し脳死判定を受け脳死と確定した人の場合のみ脳死が「死」とされるが、改正案の一つは脳死を一律に「人の死」であると規定するものもあり、これも議論を呼んでいる。

 

 それぞれの改正案の中身は今後詳しく見ていくとして、根本は、10年以上前に現行法が審議された際に、私たちに投げかけられた問いに再び直面しているともいえる。その問いを再び繰り返してみたい。

 

 自分が、家族が、「臓器移植をしなければ命が助からない」といわれたら、あなたはどうしますか?

 

 もし、身近な人が「脳死」と診断されたら、あなたならどうしますか?

 

 突然の病や事故でいつ、誰が脳死状態になるか、移植が必要となるかわからない。患者や医師など立場は問わず、幅広くご意見を募りたいと思います。(信)

 

 

 

 

 

 

【風(2)】

 

「配慮」か「強要」か

2009.5.15 13:39

 

 平成9年に施行された現行の臓器移植法では、臓器提供を前提とする場合に限り、脳死を「人の死」と定めている。この現状を「人の死」が2種類あると医療現場から批判もある。

 

 1例目から国内の脳死心臓移植にかかわってきた大阪大病院の福しま教偉医師は、「人の死において、脳死だけが例外的に法律で決まっている。脳死を人の死と認めていないことが、結果として臓器提供者(ドナー)家族を悩ませている。明らかに法律に問題がある」と指摘する。

 

 日本では社会通念上、死は「心停止、自発呼吸停止、瞳孔散大」の3兆候で確認されてきた。これに対し「脳死」は脳幹を含む脳全体の機能が元に戻らなくなった状態をさす。心臓は動いていても、人工呼吸器などの機器を使わないと機能を維持できない。脳死は医学の進歩が生んだ新たな「死」ともいえる。

 

脳死になっても、心臓が動いているために体はあたたかい。ただ眠っているだけのように見えるケースもあり、脊髄(せきずい)反射により体が動くこともある。このことが家族にとって死と認めにくい理由の一つになっている。

 

 現在、国会にはA、B、Cと呼ばれる3つの改正案が提出されており、15日午後には4つめの改正案「D」が提出される見通しだ。4つの案のうち脳死を一律に人の死としているのはA案だけで、B、C、D案は現行法と同じだ。

 

 現行法で、脳死を一律に人の死としなかったのは、良く言えば、脳死に遭遇した家族への「配慮」だ。死を認めたくない人に選択の自由を与えた。意地悪くいうなら、家族に死の選択を「強要」したともいえる。

 

 この「強要」がドナー(臓器提供者)側の家族を苦しめているという意見もある。つまり、提供後も「家族の死を承諾した自分の決断が正しかったか」と悩み、臓器提供を受けた人(レシピエント)に人生をやり直せるチャンスを与えたことの誇りや喜びを感じにくくしているというのだ。

 

 「配慮」か、「強要」か。どうとらえるかは難しい。(信)

 

 

 

 

 

 

【風(3)】

 

世界で最も厳格な日本の判定

2009.5.18 14:53

  

 今回の臓器移植法改正の焦点の一つは脳死をどうとらえるかだということは前回で述べた。今回は実際の現在の医療現場で脳死判定がどのように行われるかを見ていきたい。

 

 厚生省(当時)の研究班が平成11年にまとめた「法的脳死判定マニュアル」などによると、まず、脳死判定前に移植コーディネーターらが意思表示カードなどで本人の意志を確認する。その後、家族が脳死判定と臓器摘出の承諾書にサインすれば、医師は除外基準に基づき、脳死と似た状態になる急性薬物中毒や、知的障害者など本人の意思表示が有効でないケースの判定は除外。これだけがそろってはじめて判定が始まる。

 

 判定項目は、深い昏睡(こんすい)▽瞳孔の固定▽脳幹反射の消失▽平坦(へいたん)な脳波を確認し、最後に10分間人工呼吸器を止め、自発呼吸の消失を確かめる「無呼吸テスト」を行う。すべてを6時間以上あけて2回、2人の専門医で判定する。

 

 すべて満たさないと臓器提供はできず、この基準は世界で最も厳しい。さらに移植後に判定に疑いがなかったかの検証も専門家によって行われ、判定そのものに顕著な問題があったケースはこれまでない。

 

 それでも、「診断基準は本当に正しいのか」との批判もある。特に、今回の法改正で現実になるかもしれない子供の脳死判定は、現場の小児科医からは強い抵抗を示す声も出ている。

 

 大阪医科大の田中英高医師は、4月の衆院厚生労働小委員会で「子供の臨床的脳死判定をしても、その後脳波が少し出たとか、一概に脳が死んだとはいえないことを経験として肌で感じている」と話している。

 

 確かに子供の脳は成人よりも柔軟とされ、より厳しい脳死判定が必要だとの議論もある。ただ、子供の脳死に関し、判定で最も重要な検査である無呼吸テストを行った研究がほぼ見当たらず、科学的な議論が難しいという現状もある。

 

 法改正議論のほかに、子供の臓器提供に科学的にハードルがあるとすれば、これをクリアする努力が必要なのかもしれない。(信)

 

 

 

 

 

 

【風(4)

 

臓器移植法改正「移植の可能性求め…A案」

 2009.5.19 14:37

 

 

  ドイツで留学中という心臓外科の男性医師からメールが届いた。医師の病院では、これまで複数の日本人家族が、心臓移植を希望して渡航してきたという。

  

 《生まれてから成人近くになるまで自分で満足に散歩もしたことがない女の子が、つらい試練を乗り越えて元気に自分の足で日本に帰っていく姿を見て、移植医療のすばらしさを日々体験しております》

 

 医師は、実際に心臓移植に携わる医師として《心臓移植を希望している患者は、心臓移植でしか絶対に命が助からない患者で、この先、生きるためには新しい心臓をもらうこと以外に方法がない》と強調する。その上で、日本で脳死した人から心臓をもらうことは《宝くじに当たるより難しい》と現状を憂う。

 

 ドイツの法律は、今日本で審議されている4つの改正案のA案に似ているという。意思表示カードを持っていなくても家族の意思だけで移植が可能で小児の提供に年齢制限はない。

 

 医師は、移植を受ける側、臓器提供する側、それぞれの苦悩は十分理解できるという。もし自分の子供が脳死といわれても《ひょっとしたら、と可能性に期待すると思う》。もし妻が、脳死になった場合は《きっと迷うでしょう。ノーという可能性は高いかもしれません》とする。

 

 だが、医療者の立場として助かる命を助けられるようになるのは、《A案しかない》と言い切る。ほかの案では、現状とほとんど何も変わりはないと。

 

 《A案は、臓器を提供する側になった場合、提供したいという意志と、したくないという意志の両方をしっかり尊重しています。現行法よりも臓器提供の可能性を高め、また小児の可能性も高めるというもので、これ以外の案は考えられません》

 

 そして、最後にこう投げかける。

 

 《厳しい言葉を勇気を持って書かせていただきます。これから死んでいく人を守るべきか、これから生きていける人を守るべきか。僕にとって答えははっきりしていますが、みなさんはどうでしょうか?》(信)

 

 

 

 

Eメール Kaze@sankei-net.co.jp FAX 06-6633-1940 郵送 〒556-8661(住所不要)産経新聞社会部「風」 お便りには、ご自身の電話番号、年齢を明記してください。

 

 

 

 

(続きます)

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

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